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これは、「運命の最初のエッセイ」となった JICA国際協力全国高校生エッセイコンテスト1993 準特選 受賞 の副賞で、インドネシア研修旅行に参加した経験がもとになっています。
エッセイコンテストの東京での授賞式を終えて、沖縄での受賞報告会に参加しスピーチをすることになりました。
すると、その会場にはまたまた運命の人が……。
スピーチが終わった私に、一人の女性が声をかけて下さいました。
「あなたのスピーチはとても素晴らしかったです。是非、この内容で『国際理解・協力のための高校生の主張コンクール』に出場しませんか?」
この方は、コンクールの主催者であり、後に沖縄市長になられた東門美津子さん。
この時の一言がなければ、私はコンクールには出ていませんでした。
そして、全国大会で特賞を頂くこともありませんでした。
全国大会から戻った私を、東門さんが「やっぱりね!」という少しいたずらっぽい笑顔で迎えて下さったことを、覚えています。
経験は、こうしてつながっていくものなのだということを学んだ貴重な出来事でした。
この何年も後に、またまた不思議なご縁で、今度は審査員としてコンクール会場にうかがうことになりました。
そんな運命をつないでくれたコンクールの原稿です。

「本当の協力、優しさとは?」
「日本は、少し頼めばすぐにお金を出してくれる。
今、インドネシアの人々の心には、日本に対する依存心が強くなっています。
資金援助といえば響きは良いのですが、そのため彼らは、努力する気持ちが小さくなり、働く意欲が失われてしまい、技術指導がとてもやりづらくなっています」
今年の夏、インドネシア研修旅行に参加した時聞かされたこの話は、旅行の間中、私を悩ませました。
本当の協力、優しさとは何だろう?
私たちが今やるべきことは、一体何なのだろう?
だんだんふくらんでいく疑問に、私の頭の中は混乱してしまいました。
そんな時に出会った砂防技術センターの専門家の方が、私にこんな話をして下さいました。
「僕がインドネシアに来た時、この国の人みんなに靴をはかせてあげたい、と思いました。
僕が買ってあげれば一番簡単なことですが、それではみんなには何も残らないではないかと思い、考えた結果、インドネシアの風土に合った靴の作り方を教えてあげようと思ったのです。
そのために、まず、靴の材料の作り方からはじめよう……と。
今すぐに成果は出なくても、何年後かに少しでもみんなの力になれたらと思い、一日一日、一緒に頑張ってやっています」
その姿勢に、私はとても勇気づけられました。
同じ人間として、同じ高さに立って彼らと向き合い、自分の力を出してあげる。
それだけでなく、彼らからも、自分にはない力を分けてもらうこと。
そしていつか、彼らが自分の力で歩き出して、自分より他に困っている人々に出会った時、今度は彼らが力になれるように、今、一緒に悩み汗を流して頑張っていくこと……。
その気持ちこそ、本当の協力、優しさであるということを、現地で活動する専門家の方々、青年海外協力隊の皆さんとの出会いを通して教えて頂きました。
もう一つ、専門家の方の言葉が私の心に残っています。
「今のインドネシアは、途上国と呼ばれていますが、三十年前の日本とまったく同じですよ」
三十年の差といえば、父と私の年齢差と同じです。
もし、この世界を一つの家族と考えることができれば、今の日本は親の立場であり、途上国と呼ばれている国々は、今、歩き出そうとしている子供と同じではないでしょうか?
それならば、親が私を育ててくれたように、日本も世界の家族の親として、相手の国の将来を考え、その国の成長に合わせたバックアップができる国であり続けてほしいと願います。
そのために私も、まずは自分にできることから始めることにしました。
沖縄国際センターを訪れ、タンザニア、ザイール、トルコやブルンジからの研修員の方々と友達になり、我が家へ招待しました。
狭い家に普段着のままで彼らをお迎えしたのですが、「大切なのは、心です」と涙を流して別れを惜しんでくれたのには、逆に、私たちの方が戸惑ってしまいました。
お互いに持っている「心の宝もの」をプレゼント交換する、そんな私たちの交流は、いつも新しい発見でいっぱいです。
これから私は、彼らの純粋なメッセージをもっと素直に受け止められるよう、自分の心を磨きたいと思います。
そしていつか、国境を越えて人の心を結ぶ親善大使となり、彼らの国を訪れたい……これが、今の私の夢です。
私にとって、本当の協力、優しさを求める旅は、まだ始まったばかりです。
一つひとつの出会いを大切に、今、夢への第一歩を踏み出そうと思います。
※ 1993年 第40回 国際理解・協力のための高校生の主張コンクール 文部大臣賞(特賞) 受賞